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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第40章 《巻の参―出家―》
 時橋の脳裡に、泉水の幼かった頃の姿が次々に蘇っては消えてゆく。初めて乳を吸わせた赤児の頃の無心な顔、樹に登っては時橋に叱られてばかりいた少女の頃、泰雅に嫁いだ日の眼の覚めるような艶やかな白無垢姿、黎次郎を生んで母となった瞬間の輝くような笑顔―。
 子どもの頃から愛情を込めて、ゆく末は幸多かれと願ったのに、むざとこの若さで豊かな丈なす黒髪を降ろすのはあまりにも不憫であった。
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