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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第40章 《巻の参―出家―》
口許に耳を寄せていても、既に息遣いは完全に絶えていた。喉をひと突きにしたものか、血に染まった短刀が物言わぬ骸の傍に転がっていた。
「何故じゃ、何故、このようなことを」
涙が溢れ出て止まらない。
「こんなに冷とうなってしもうて」
泉水は時橋の冷たくなった身体を抱きしめ、その手をさすり続けた。そうすれば、時橋の身体が温かさを取り戻し、失った生命を呼び戻せるとでもいうかのように、ただ一心にさすり続けていた。