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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第40章 《巻の参―出家―》
 静寂が二人の尼を包む。光照は泉水の手のうえの蝉をそっと掴んだ。
「蓮照、この蝉は何のためにこの世に生まれきたのだと思いますか」
 唐突に訊ねられ、泉水は応えに窮した。
 考えあぐねた末、思ったままを口にする。
「この蝉は生きるといえるほど生きてはおりませんでしょう。何のため―と申されましても、私にはお応えのしようがございませぬ」
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