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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第41章 《巻の四―岐路(みち)―》
 泉水は廊下を歩きながら、小さな息をついた。思いがけず泰雅に山野で出逢ってから十日近くが経っている。あの後、二、三日は泰雅の影に怯えて暮らしていたのだが、心配していたようなことは何も起こらず、普段と同じ穏やかな刻が過ぎていった。泰雅は追いかけてもこなかったし、朝、川に水汲みに行くときにあの菜の花畑の傍を通っても、二度と泰雅に出逢うことはなかった。
 とはいえ、極力、用事のあるとき以外は寺の外に出ないように気をつけてはいるのだけれど。
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