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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第41章 《巻の四―岐路(みち)―》
 光照の眼に光るものがあった。伊左久の皺深い顔に埋もれた細い眼も濡れている。
「庵主さまもどうかご息災で」
 泉水は新調したばかりの墨染めの衣を身に纏っている。門出の日ゆえと光照が整えてくれたものだ。光照は敢えて、この日を〝門出〟だと言ってくれた。
 泉水は伊左久にも深々と頭を垂れた。
 伊左久が袖でしきりに眼をこすっている。
 多分、泣いているのだろう。この寺に五年もいたのに、光照と伊左久が泣いているのを見るのは、これが初めてであった。
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