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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第43章 《巻の壱―花惑い―》
泉水が生まれた落ちたその日から、終始影のように付き従い、まめやかに仕えてきた乳母だった。もう、あの優しい乳母は、この世のどこを探してもいない。泉水が剃髪して世捨て人となってしまったことを嘆き、絶望して自ら生命を絶ってしまった。
今頃、時橋は、その浄土とやらの蓮のうてなにいるに違いない。時には厳しく時には優しく、泉水を育て導いてくれた女(ひと)だった。五歳で生母を喪った泉水にとって、時橋は〝母〟と呼ぶ大切な存在であり、唯一、心を許せ信頼できる者であった。
今頃、時橋は、その浄土とやらの蓮のうてなにいるに違いない。時には厳しく時には優しく、泉水を育て導いてくれた女(ひと)だった。五歳で生母を喪った泉水にとって、時橋は〝母〟と呼ぶ大切な存在であり、唯一、心を許せ信頼できる者であった。