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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第43章 《巻の壱―花惑い―》
相も変わらず、泉水にとって、この居心地良く整えられた室内は牢獄のように思われる。いや、以前にも増して、我が身はここからけして逃れられぬ囚われ人なのだという想いは強い。泰雅に半ば脅迫された形で、ここに連れ戻されてしまった今、再び逃れようすべがあるとは思えなかった。泉水の行動一つで、師光照や懐かしい月照庵に累が及ぶのかと考えれば、我が身の感情だけで軽はずみには動けない。そして、そのような状況に追い込む泰雅に対しての気持ちはますます冷めてゆく。