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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第43章 《巻の壱―花惑い―》
河嶋が嘆息する。泰雅を育てた母代わりの乳母の言葉ゆえ話半分に聞くとしても、確かに泰雅は女から見て魅力的な男であった。艶やかな美男でありながら、軟弱さは微塵もなく、精悍さと逞しさを兼ね備え、優雅な立ち居ふるまいと女心をくすぐる挙措は女を惑わせるには十分であった。
「私は殿が嫌いなのではない」
生理的に男を受け容れることができない性(さが)なのだ―。いかにしても、そのようなはしたない科白は口にできるものではない。