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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第43章 《巻の壱―花惑い―》
 河嶋が去った後、部屋の中はしんとして物音一つ聞こえない。耳を澄ませてみても、先刻の鶯の音はもう二度と聞こえてはこなかった。
 泉水は、その場にへたりと座り込み、畳に身を投げ出した。この屋敷に戻ってきてからまだ数日だというのに、もう何十年も経ったような気がしてならない。
 空しい。ただ、すべてが空しかった。
 誰も自分の気持ちを理解してくれる人がいない。誰も泉水の本当の気持ちを判ろうとしていない。
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