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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第44章 《巻の弐―反旗―》
茫然とする河嶋の前を泉水は悠々と通り過ぎる。ハッと我に返った河嶋がそっと寝所の方を窺ってみても、特に何か変事があったとは思えない。河嶋はここは何事もなかったように朝まで穏便に過ごすことが肝要と判断した。見苦しく騒ぎ立てれば、泉水が寝所から早々にいなくなってしまったことを他の者たちに知られてしまう。そうなれば、余計な憶測を生むばかりか、泰雅の体面にも拘わる。河嶋は共に宿直を務める今一人の若い腰元にも他言は無用と十分に口止めをした。