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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第44章 《巻の弐―反旗―》
寝所の前で河嶋が止まる。
「失礼致しまする」
と頭を下げ、寝衣の上から軽く泉水の身体に触れ、しまいに髪にも触れる。これは当主と二人きりになる寝室で女が万が一、刃物などを持ち出さぬとも限らぬための用心であった。頭髪を確かめるのは、簪や笄が武器になり得ることを考慮してであった。これまで河嶋は正室である泉水に遠慮して、この身体検査をすることはなく過ぎていたのだが、流石にここ最近の泉水の動向を警戒しているらしい。