この作品は18歳未満閲覧禁止です
蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第45章 《巻の参―変化(へんげ)―》
また、あの時、泉水は確かに自らの意思で黎次郎を手放し、脇坂に託したのだ。脇坂は、必ずや黎次郎を榊原家の立派な世継として育て上げると約束した。その言葉一つを信じ、黎次郎の将来を思い、断腸の想いで見送ったのである。
今になって、あのときの選択は間違ってはいなかったと思う。脇坂は約束を守り、長年務めた家老職を退いてまで、黎次郎の養育ひと筋に生きてきた。その甲斐あって、黎次郎は利発な子に育っていると聞く。