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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第45章 《巻の参―変化(へんげ)―》
ゆえに、表で育つ黎次郎を泉水が見ることは滅多とない。一度だけ奥庭で遊び仲間―黎次郎と同じ年頃の重臣の子弟が小姓として上がっている。彼等は成人後は黎次郎の側近となるはずだ―と隠れ鬼をする姿を見たことがある。丁度、廊下を歩いていたときのことで、声をかけて抱きしめたい衝動を必死に抑えた。
親子の対面もいまだに果たせてはいない。逢おうと思えば、むろん逢えぬことはない。だが、乳飲み子のときに手放した我が子に今更、母親面して逢う勇気はなかった。
親子の対面もいまだに果たせてはいない。逢おうと思えば、むろん逢えぬことはない。だが、乳飲み子のときに手放した我が子に今更、母親面して逢う勇気はなかった。