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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第46章 《巻の四―儚い恋―》
泉水の身体がまさに水面に吸い込まれそうになったその刹那、か細い身体は背後からしっかりと抱き止められていた。
「おい、何をしてるんだ? 馬鹿なこたァ考えるんじゃねえぜ」
どこか懐かしさを憶えるその声に、泉水は思わず現に引き戻された。まさに、その男の声が、逞しい手が、泉水を現世に繋ぎ止めたのである。この名も知られぬ小さな川には〝和泉橋〟と呼ばれる橋がかかっている。榊原家の屋敷もある閑静な武家屋敷町と商人たちの町、町人町とを繋ぐ橋であった。
「おい、何をしてるんだ? 馬鹿なこたァ考えるんじゃねえぜ」
どこか懐かしさを憶えるその声に、泉水は思わず現に引き戻された。まさに、その男の声が、逞しい手が、泉水を現世に繋ぎ止めたのである。この名も知られぬ小さな川には〝和泉橋〟と呼ばれる橋がかかっている。榊原家の屋敷もある閑静な武家屋敷町と商人たちの町、町人町とを繋ぐ橋であった。