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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第46章 《巻の四―儚い恋―》
「本当によく話してくれた」
泉水はたまらず顔を覆った。湧き出てくるのは先刻までとは違い、哀しみがもたらすものではなく、嬉し涙であった。泉水を唯一、理解してくれた夢五郎でさえ、ここまでの科白をくれはしなかったのだ。
ふわりと、兵庫之助の胸に抱き寄せられる。
だが、泉水はもう抗いはしなかった。女の勘で、この抱擁に何ら性的な意味はないと判っていたからだ。それは、兄が妹を腕に抱き、慈しむのと何ら変わりはなかった。