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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第46章 《巻の四―儚い恋―》
今度こそは強引に連れ戻されるか、その前にここで斬り捨てられるだろうと覚悟をしていたのに、あまりにもあっさりとした退き方であった。これまでの執念深い泰雅からでは考えられないことだ。
泉水は三和土に降り、表の様子を窺った。
泰雅は本当に帰ったのか、表の路地には人影はなく、ただ真夏の陽光に灼かれる道が陽炎のように白い湯気をゆらゆらと立ちのぼらせているだけだ。
なにげなく軒下を見た泉水の顔から血の気が引いた。