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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第48章 《巻の壱―涙―》
泉水の心の奥底に怒りの焔が灯った。違う、兵庫之助はそんな男ではない。確かに六年前、泉水と知り合ったばかりの頃は旗本奴であり、似たような境遇の旗本の次男坊たちと徒党を組み、大勢の人々に迷惑をかけていた。だが、今の兵庫之助はけして他人から恨まれる―しかも殺害されるほどの悪事をしていない。それに、たとえ無頼の輩であった時代を考えてみても、あれほどまでに酷い殺され様をしなければならないほどのことをしでかしているとは考えられなかった。