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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第50章 《巻の参―臥待月の夜―》
 泉水はうつむいたまま、ひっそりと涙を流し続けた。泰雅が近付いてくる。何をするのかと思っていたら、泉水の手前に落ちている懐剣を拾い、その手に握らせた。
「さあ、俺を殺せ。俺が消えれば、そなたももう泣くことはない。これまであった何もかも忘れられるだろう」
「殿―」
 涙に濡れた眼で見上げると、泰雅が薄く笑った。
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