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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第51章 《巻の四―花の別れ―》
周囲を雪ばかりに囲まれた中、そこだけ地面が露わになった穴のような場所で、黄色い小さな花が寄り添い合って咲いている。どんなに苛酷な環境でも、花は耐え抜き、己れの花を咲かせる。自然の、生命の尊(たつと)さに頭の下がる想いがして、泉水は思わず畏敬の念を憶えずにはおれなかった。
江戸を離れてから、はや何年どころか、何十年経っただろう。積み重ねてゆく年月のあまりの長さに、いつしか指を折って数えるのも忘れてしまった。