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第55章 第一話　【春雷】

　幸いにも、泉水は母親よりも父親に似ており、病らしい病もせず健やかに育った。少々元気すぎるほどで、それが時橋の悩みの種である。雛遊びや貝合わせといった女の子の遊びには全く興味を示さず、男の子のように庭の樹に登ったり、木刀を振り回したりしている。そのお陰で、〝町奉行槙野さまの姫君は、なかなかのお転婆姫だそうな〟との評判が立ち、泉水の男の子顔負けのお転婆ぶりは武家はおろか、町人たちまでの間にひろまっている。