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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第55章 第一話 【春雷】
何を話したら良いか判らなくて、咄嗟に出た科白がこれだった。やわらかさを増した早春の陽差しが祐次郎の頬に翳を落としている。庭に降り注ぐ陽差しに眩しげに眼を細めるその横顔に、泉水はホッとした。
祐一郎の顔色は随分と良くなっている。半年前に見た儚さは今の彼からは微塵も窺えない。血色が良いとまでは言えないけれど、それは初めて逢ったときと同じだ。今は少なくとも蒼白いという色ではなく、わずかだが血の気も戻っているようだ。