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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第55章 第一話 【春雷】
「花を、見ていました」
 唐突に言われ、泉水は眼を見開いた。
「花でございますか?」
「ええ、椿がとてもきれいだ」
 祐次郎の視線の先を辿ると、少し前方に椿の樹が見えた。艶やかな紅い花を幾つもつけ、温かな陽差しの中で揺れている。
 まるで愛おしいものでも見るかのような祐次郎のまなざしに、泉水の口から思わず言葉が零れていた。
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