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第55章 第一話　【春雷】

「以前見た泉水さまは、そのように固くなったりはせず、とても自然体でいらっしゃったような気がしますが、何だか今日は前と違うようですね」
「ひ、久しぶりに祐次郎さまにお逢いしたので、きっと緊張しているのだと思います」
　少し言葉がどもってしまった。何という不格好な。滅多に逢わぬ許婚者であれば、もう少し良いところを―例えば時橋がよく口にするような〝良家の子女らしき、楚々とした奥ゆかしき様〟を見せたい。