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第55章 第一話　【春雷】

　祐次郎が微笑んだ。
「一本の樹にふた色の花、それは珍しいな。私も話には聞いたことはあるけれど、まだ実際に見たことはない。良かったら、案内して貰えるだろうか」
　けして押しつけがましさのない申し出に、泉水は大きく頷いた。
「私で良ければ、ご案内します」
　その言い方がおかしかったのだろうか、祐次郎はクスクスと笑い声を立てた。