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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第55章 第一話 【春雷】
泉水はたとえ定利・祐次郎父子の前であろうと、取り澄ましたりはしなかった。好奇心を露わにした瞳を輝かせて、父親たちの話に聞き入り、時に祐次郎を興味津々といった様子で見つめた。流石に時橋を怒らせるほどの失態はしでかさなかったものの、年頃の姫があからさまに許婚者を見つめたりするのは、あまり体裁の良いこととは言えない。深窓のたおやかな姫は恥ずかしがり屋で相手の男の顔をまともに見ることもできず、ずっとうつむいていなければならないのだ。