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第55章 第一話　【春雷】

　雨の音以外に何も聞こえぬ空間は、まるで外の世界と一切遮断されているかのようだ。あたかも、この世に泉水と祐次郎の二人だけしか存在しないような錯覚に囚われそうになる。
　泉水が奇妙な感覚に囚われていると、ふと祐次郎が手を伸ばし、泉水の髪に触れた。
　泉水が愕いて顔を上げる。泉水よりは、はるかに背の高い祐次郎を見上げる形になった。