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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第55章 第一話 【春雷】
 祐次郎が懐から何かを取り出す。いつの間に手折ったのか、祐次郎の手には一輪の椿が握られていた。
「これをあなたの髪に」
 祐次郎の言葉と共に、一輪の紅い花が泉水の黒髪に飾られる。艶やかな紅い花の簪は濡れたようなつやのある黒髪に映えた。
「私は姫に相応しき男になりたいと存じます。どうか、姫、私が一人前の男になるまで、待っていて下さい」
祐次郎から初めて聞いた求愛の科白だった。
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