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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第57章 《壱》
 人並に所帯を持ってみたい―そんな気持ちが生まれて初めて芽生えた瞬間であったが、惚れた娘の一人もいない身では、致し方なかった。
―俺もつくづく甲斐性のねえ男だな。他の女の身を飾る簪ばかりこしらえても、肝心の簪を贈る女の一人もいねえんじゃあな。
 内心、ぼやきながら表に出てきたときのことであった。斜向かいの家の腰高障子が開いて、一人の女が出てきたところだった。
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