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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第57章 《壱》
その女房おきぬは太り肉(じし)で赤ら顔のどう見ても器量が良いとはいえない女ではあったが、その分、朗らかで話し好きだ。とはいえ、いささか喋り過ぎという感は否めないが、それは、この長屋に住まう女房連の誰にもいえることだ。
おきぬはいつもの調子でぺらぺらと、訊きもしないことまでを喋った。おせんの亭主である武士とおせんが人も羨むほど仲睦まじい夫婦であったこと、しかしながら、ある日突然、その亭主が何者かによって惨殺されてしまい、結局、下手人は捕まらなかったこと。
おきぬはいつもの調子でぺらぺらと、訊きもしないことまでを喋った。おせんの亭主である武士とおせんが人も羨むほど仲睦まじい夫婦であったこと、しかしながら、ある日突然、その亭主が何者かによって惨殺されてしまい、結局、下手人は捕まらなかったこと。