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第58章 《弐》

　先頭に立っているのは、この長屋に住む桶職人美濃吉の倅浅吉(せんきち)、同じ長屋の子どもを集めては徒党を組んで悪戯ばかりしでかすガキ大将である。九歳という歳の割には身の丈も横幅も大きく、十三、四歳に見える。
　後の取り巻きも皆、この長屋の子どもに相違なく、年齢も似たり寄ったりである。男の子たちにはやされているのはおせんの娘―お征(いく)だった。