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第58章 《弐》

　が、走り去りながら、浅吉が振り向きざま言い放った。
「お征が父なし子だっていうのは本当のことじゃねえか。本当のことを言って、何が悪いんだよう」
　全く懲りてはおらぬその憎々しげな捨て科白に、維助は肩をすくめた。
「しようがねえな。あいつの父親の美濃さんは話の判る、分別のある人だがな」
　維助は呟くと、逃げ足は速い浅吉の後ろ姿を苦笑いを浮かべて見送った。