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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第58章 《弐》
その夜、維助は、おせんの住まいの前に佇んでいた。わずかに縁の欠けた月が藍色の天(そら)にかかっている。冴え冴えとした月の光が道をほの白く浮かび上がらせている。無数の星たちが降るように瞬き、煌めいている。
維助は深呼吸すると、ありったけの勇気を振り絞った。そろそろと伸ばした手を腰高障子にかけようとした、まさにその時。
内側から女の子のすすり泣きが洩れ聞こえ、思わずビクリとして動きを止めた。泣き声はお征のものに違いない。おせんが必死で宥めようとしているようだ。
維助は深呼吸すると、ありったけの勇気を振り絞った。そろそろと伸ばした手を腰高障子にかけようとした、まさにその時。
内側から女の子のすすり泣きが洩れ聞こえ、思わずビクリとして動きを止めた。泣き声はお征のものに違いない。おせんが必死で宥めようとしているようだ。