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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第58章 《弐》
 折角のお征の努力もどうやら成功はしなかったようだ。奇妙な泣き笑いの表情を浮かべる娘を、おせんが頷き、どこか切なげな顔で見下ろしていた。そっとお征を引き寄せ、その髪に顔を埋めている。二人の母娘は長い間、そのままの体勢で動こうともしない。維助は脚音を立てぬよう細心の注意を払いながら、そっと踵を返す。
 十三夜の月が維助の脚許を照らし出していた。
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