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第58章 《弐》

　おせんの作っただし巻き卵にも逆らいがたい魅力があったが、いかに何でも昼(ひる)刻(どき)に急に現れて、のこのこと上がり込むことはできない。そんな厚かましい男だと―もっとも、おせんは純粋な厚意から勧めているゆえ、そんなことは思わないだろうが―は思われたくなかった。
「いや、そう言って貰えるのは嬉しいが、今日のところは止すよ」
　曖昧な笑顔を浮かべた維助に、おせんは眩しい笑みを向けた。