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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第61章 《其の弐》
嗣道には舅のような庭いじりの趣味は全くないけれど、父の愛し大切にした庭をおろそかにはせず、庭は嗣光がここで暮らしていたときのままによく手入れされている。気位の高い冷たい姑とは違い、弥子をも温かく迎えてくれた穏やかな舅であった。
鬱蒼と生い茂る樹々の上に、白らんだ月が頼りなげに掛かっている。黒々とした影となって夜空に覆い被さるようにそそり立つ樹々とその真上に浮かんだ月は、さながら影絵芝居の一幕のようにも見える。