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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第61章 《其の弐》
当時、時橋は江戸から遠く離れた山頂の尼寺で尼となるべく出家した泉水に付き従っていた。長じて後、五千石取りの旗本榊原泰雅に嫁いだ泉水は、執拗な良人の手から逃れ、尼寺に身を隠していた。時橋は自らが育てた大切な女主人が突然に世捨て人となってしまったことに大変な責任を感じており、泉水の出家を止められなかったこと、そこまで追いつめられた泉水の心を救えなかったのは、己れの罪だと思い込んだのである。その挙げ句の自害であった。