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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第64章 十三夜の月 《壱》
そこは十年来の気心の知れた友人同士の間柄のこと、持って回った言い方よりは直截に話した方が良いと判断したのであろう。何より、誠一郎は豪胆な気性で、何事も他人を陥れたり謀をするのが大嫌いであった。根っからの正直者といえば聞こえは良いけれど、その分、短気直情型ともいえる。
一方、壱之進は兄とは全く対照的であった。普段から冷静沈着をもって知られ、およそ血気に逸るということはない。思慮のある男―というのが周りからの壱之進の評価であった。
一方、壱之進は兄とは全く対照的であった。普段から冷静沈着をもって知られ、およそ血気に逸るということはない。思慮のある男―というのが周りからの壱之進の評価であった。