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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第9章 《巻の四》
「何だと、今、何と申した?」
 源太夫の顔が更に朱に染まる。
「榊原の屋敷には戻らぬと申し上げました」
 泉水が昂然と顔を上げて言うと、いきなりピシャリと右頬に痛みを感じた。
「我が儘も良い加減にしなさい。いつまでも嫁ぐ前の娘のような気分でいては、泰雅どのにも直に愛想を尽かされるぞ」
 十七年間の生涯で、生まれ初めて父にぶたれたのだ。泉水はただ茫然として父を見つめた。
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