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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第2章 巻の壱ー槇野のお転婆姫ー
判ってはいる。乳母は心底、泉水のゆく末を案じているのだ。だからこそ、このようになりふり構わぬ体で、あからさまに嘆き哀しむこともできるのだ。だが、当の泉水自身、良人の夜(よ)離(が)れなぞ端から何とも感じてはいないのだから、何もここまで気にすることはないだろうにと思ってしまう。むしろ、これから日に何度となく、こうやって乳母の繰り言につきあわねばならぬかと考えると、その方が絶望的な気分になるのは、いささか“親の心子知らず”といった罰当たりな行為だろうか。