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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第2章 巻の壱ー槇野のお転婆姫ー

そう、乳母の時橋は、泉水にとっては母も同然の大切な存在だ。五つで生母を失った泉水を時橋は我が子に対するような情愛を注いで慈しみ育ててくれた。父槇野(まきの)源(げん)太夫(だゆう)は泉水を嫁がせるまで、再婚もせずに娘の成長を見守り続けてきた。今年の春、一人娘の泉水が無事嫁いだのを見届けた上で、この秋にかねてから側に置いていた側室の深雪と正式な祝言を挙げることになっている。深雪と父の間には既に虎松丸という二歳になる男の子まで産まれている。父は泉水にひと言も言わなかったけれど、この日を待ちわびていたに相違ない。

