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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第9章 《巻の四》
その男が両手をついて深々と頭を垂れ、泉水を生涯大切にすると誓った。あの真摯な眼には、嘘は微塵も含まれてはいなかった。泰雅本来の人柄を表すかのように、澄んでさえいたのだ。
榊原泰雅という男は、今一つ計りかねるところがあるのは確かだ。何を考えているのか判らぬ、そんな得体の知れぬ危うさを持っている。もしかしたら、女に現を抜かし、かりそめの恋に生きているように見えるのは、ほんの見せかけにすぎないのではないか―と思うときがある。