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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第2章 巻の壱ー槇野のお転婆姫ー
泉水としては、良人の眼を気にせず、日々悠々自適に過ごしている。好きな漢籍―女だてらに漢字がずらりと並んだ小難しい本ばかりを読むのが好きなのだ―を読みふけり、飽きれば庭に出て樹に昇る。高みから見下ろす地上や蒼い空はまた格別だ。涯(はて)なく続く空を眺めていれば、良人の訪れがないことなぞ何ほどのこともないと思えてくる。そのような俗世の些事に患わされるのがいかにも馬鹿げたものに思えてくるから不思議だ。