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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第9章 《巻の四》
 無理もなかった。たとえ、そこにいかなる理由があるにせよ、泉水は良人に無断で屋敷を飛び出して、実家に帰ってきたのだ。殊に榊原家ほどの大身旗本の奥方として取るべき態度ではない。
 静かな刻が流れた。
 泰雅は何を言うでもなく、庭に視線を投げている。泉水は所在なさげに泰雅と庭を交互に見ていた。
 と、泰雅が庭を見つめたままフッと笑った。
 良人の意外な反応に、泉水は戸惑いまじまじと見つめる。
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