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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第11章 《巻の壱―予期せぬ災難―》
すべてが誤解であり、根も葉もない噂であると知り、泉水は漸く泰雅に対する疑惑を消すことができた。あれからひと月、江戸は今、容赦ない真夏日が連日続いている。泰雅とは以前と変わらぬ毎日を過ごしていた。
泉水は今日、こっそりと屋敷を抜け出していた。良人泰雅からは絶対に一人で町に出てはならぬと固く禁じられている。しかし、そんな命に素直に従う泉水ではない。実は、これまでにも二、三度、泰雅には内緒で乳母の時橋の眼をかすめて、こうしてお忍びで町を闊歩している。
泉水は今日、こっそりと屋敷を抜け出していた。良人泰雅からは絶対に一人で町に出てはならぬと固く禁じられている。しかし、そんな命に素直に従う泉水ではない。実は、これまでにも二、三度、泰雅には内緒で乳母の時橋の眼をかすめて、こうしてお忍びで町を闊歩している。