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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第12章 《巻の弐―待ち人―》
 白髪の優しげな老人は、同じ裏店に住む伊東宗竹である。もう六十は近い歳だが、金のない貧乏人から高い施薬料を取らないので、人気があった。腕の方も確かで、若い頃には長崎へ遊学して最新の和蘭医術を会得したという。
「ああ、先生か」
 誠吉が立ち上がる。
「どうじゃな、おさよちゃん。具合の方は」
 優しく問われ、泉水は微笑んだ。
「相変わらずで、何も思い出せません」
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