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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第3章 《巻の弐―運命の悪戯―》
《巻の弐―運命の悪戯―》
それから数日を経たある日。
江戸の町は桜の季節を迎えていた。
上野の寛永寺、随明寺を初め、江戸の至る所で桜が満開となり、遠方から見ると、その界隈は薄桃色の靄が煙ったように見える。
その日の昼下がり、泉水は江戸の町外れを一人で歩いていた。時橋の眼を何とかごまかして、漸く屋敷を抜け出すことに成功したのだ。今頃、あの忠実な乳母は卒倒せんばかりに愕き、そして立腹しているに相違ない。