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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第3章 《巻の弐―運命の悪戯―》
今日の泉水は黒髪を頭頂部で高く一つに結わえ、紫と紅のふた色の紐で束ねている。小袖は淡紅色、袴は華やいだ紫色である。久しぶりの若衆姿であった。どうも屋敷内で身にまとっているきらびやかな小袖や打ち掛けは泉水の性に合わない。
小さな橋を渡り終えた泉水はふと、女の悲鳴が背後で聞こえたのを耳ざとく捉えた。
ここは和泉橋町と呼ばれ、武家屋敷が続く閑静な一角だ。泉水の住まう榊原屋敷は、その中でもひときわ眼を引く広壮な邸宅だ。
小さな橋を渡り終えた泉水はふと、女の悲鳴が背後で聞こえたのを耳ざとく捉えた。
ここは和泉橋町と呼ばれ、武家屋敷が続く閑静な一角だ。泉水の住まう榊原屋敷は、その中でもひときわ眼を引く広壮な邸宅だ。