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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第15章 《巻の壱―幻―》
祐次郎が亡くなった時、泉水は十歳の童女にすぎなかった。軽い風邪をこじらせたのが因(もと)で、寝付くことさえなく、容態が急変して呆気なく息を引き取ったのだと。
そう、聞かされた。泉水はまだ幼少のため葬儀には出なかったけれど、乳母の時橋が代参で列席、また、むろんのこと父槙野源太夫も参列したのだ。現に、泉水は一度だけ、祐次郎の墓参をしたことがある。あれは確か浅草の英泉寺という寺だった。小さな五輪塔には、〝賢容院俊誉祐学居士〟と祐次郎の戒名が刻み込まれていた―。
そう、聞かされた。泉水はまだ幼少のため葬儀には出なかったけれど、乳母の時橋が代参で列席、また、むろんのこと父槙野源太夫も参列したのだ。現に、泉水は一度だけ、祐次郎の墓参をしたことがある。あれは確か浅草の英泉寺という寺だった。小さな五輪塔には、〝賢容院俊誉祐学居士〟と祐次郎の戒名が刻み込まれていた―。