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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第15章 《巻の壱―幻―》
そんなことがあるはずがない、祐次郎が生きて、この世に存在するなぞ、ありえない話だ。墓さえあるというのに、その墓の下に眠っているはずの人がこうして眼の前に立っているはずなどないではないか。
世の中には、そっくり同じ顔をした人間が必ず二人、いや三人はいるという。ならば、今、祐次郎と瓜二つの顔をしたこの僧も赤の他人、泉水の前に現れたのは、ほんの偶然にすぎない。必死に心の中に湧き起こる疑念を打ち消そうとする。