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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第15章 《巻の壱―幻―》
「これは私めとしたことが、戯れ言が過ぎたようにござります。どうか先ほどの言葉はお忘れ下さいますよう。名なぞ、とうの昔に忘れ果てました。今では思い出すこともなく、また思い出したとて、詮ないことにございます。それにしても、野犬にたった一人で立ち向かってゆくとは、相変わらずのお転婆姫ぶりにございますな。ご夫君の榊原さまは、いつも気が気ではございませんでしょうが、私は変わらぬ姫の姿を拝見し、嬉しうございました」